厚生労働省 実証事業の展開 @SOMPOケア柴田訪問介護事業所

SOMPOケアは、在宅介護の技術革新に対する社会的要請を鑑み、厚生労働省より「介護事業者等からの提案手法による生産性向上の取組に関する調査及び実証」(以下、実証事業)を受託しました。
WATCHでは、前回と今回の2回にわたり実証事業の取組みを紹介しています。
前回の記事はこちら→実証事業の展開 @SOMPOケア北見訪問介護事業所
第2回目は、宮城の柴田訪問介護事業所をご紹介します。
柴田訪問介護事業所を取り巻く環境
柴田訪問介護事業所は、宮城県仙台市の南部、柴田郡に属する柴田町・大河原町・村田町(3町合計人口:6万9千人)を対象として事業運営している事業所です。
訪問介護事業所のほかに居宅支援事業所、通所介護事業所を併設しています。
同地域には、大河原町から柴田町に続く約8km 1200本の「一目千本桜」という日本でも有数の桜並木があり、船岡城址公園と併せて、有名な観光名所となっています。
柴田町の詳細はこちら→柴田町のホームページ
柴田訪問介護事業所
スタッフの構成(合計28名)
・管理者1名
・サービス提供責任者(以下サ責)4名
・その他常勤職員5名
・ヘルパー18名
※サ責の1名はケアコンダクターです。
管理者は、地域の各種団体の役員を兼職するほか、事業所をあげて子ども食堂を運営するなど、地域包括支援センター、在宅医療機関、他社居宅、訪問介護、看護事業所と良好な関係性を構築し、地域に密着した運営に取り組んでいます。
サ責、ヘルパーなどの技術力の高さを背景に、看取りや困難事例に対して「断らない」スタンスを徹底していることで、収益も安定しており、堅調な事業運営が行われています。

SOMPOケア実証事業のポイント
今回の実証事業では、少子高齢化、地域の過疎化、ヘルパーの高齢化などの課題を抱える在宅介護の「品質改善」「生産性改善」を実証することを目的としています。
実証対象テクノロジーは、「SOMPOケアウィング(以下SCW)※」です。
5年前のSCW導入前と導入後で業務時間の変化を調査して、機器導入の有効性を実証し、介護業界におけるテクノロジー施策(規制緩和、加算新設、補助金拡大)を後押しするものです。
※SOMPOケアウィング(SCW)とは・・・
訪問介護・看護事業所の記録管理業務に特化したソフトで、事業所における煩雑な紙の事務作業を電子化し、ペーパーレスの働きやすい職場環境づくりを支援します。
柴田訪問介護事業所の取組み
柴田訪問介護事業所の特徴は、サ責、常勤職員、ヘルパーによる業務の実行「精度」を磨き上げる取組みであり、その過程における「SCWの使い方」にあります。
1.常勤職員・ヘルパー
SCWの導入により、ヘルパーの直行直帰割合が増加し、事務所におけるサ責面談の機会が減少しました。
これを補完するため、コミュニケーションの代替手段として、 「正確な開始、終了打刻」「特記事項の事実記載」「計画差異にかかる理由報告(電話連絡を含む)」が実施されています。
特に、情報伝達を迅速かつ正確に実施するため、柴田の常勤職員・ヘルパーは、SCWを介して、質の高い報告・連絡・相談を実施している点が同事業所の強みの源泉となっています。
2.サ責
サ責は、SCWから送られてくるデータ(開始・終了時刻、特記事項)に基づいて、ルーティン業務(留意事項伝達、承認作業)のほか、以下の取組みを実施しています。
①モニタリング
「断らない」ことを大切にする事業所として、積極的に引き受けた看取りや困難事例を、常勤職員・ヘルパーのルート表に的確に反映しています。
そのため、該当ご利用者さまの状態について確認・評価を行い、サービス提供計画の品質改善に取り組んでいます。
②OJTと教育研修
SCWで把握した、ご利用者さまの状態変化や、ヘルパーの働き方をモニタリングして、ヘルパーに対する必要なOJT、教育・研修につなげています。
③カスタムカンファ(サ責カンファ)
SCWのデータをベースに、事業所内で更新2か月前のご利用者さまを対象に事業所内カンファレンスを実施し、居宅支援事業所に対して、自立支援や残存能力の活用を考慮したプランの見直し提案につなげています。

サ責、常勤職員、ヘルパーのコメント
菊地美沙さん(サ責・ケアコンダクター)
ヘルパーの稼働時間の確認により、サービスの見直しやスキル強化ができるようになりました。在宅生活のための自立支援に特化したサービスにつなげています。
岡﨑花梨さん(サ責)
SCWを適切に利用することでご利用者さまの情報共有コメントができるほか、SCW内での計画書や手順、アセスメント項目もわかりやすく記載でき検討しやすくなりました。留意事項などの機能も便利で活用しています。
平間実喜子さん(常勤職員)
ご利用者さまの支援経過をリアルタイムに知ることで、その後のケアに結び付けることができています。また、ご利用者さまとご家族さまのニーズをSCWで把握できるため、状態に合わせながら必要なケアの実施が行え、便利に活用しています。
島田朋子さん(非常勤ヘルパー)
SCW履歴からご利用者さまの状態を把握し訪問するため、支援の際は変化にも気づきやすくなり情報共有もできています。計画書からご利用者さまの目標を知ることで、より精度の高いケアへつなげています。
伊藤裕美さん(非常勤ヘルパー)
SCWを活用することでいつでも必要な時に情報を得られ、スムーズな支援提供へつながっています。リアルタイムの情報を知ることができるのも魅力です。

下段左端 伊藤裕美さん

※上段左端 平間実喜子さん、下段右端 岡﨑花梨さん

右端 島田朋子さん

上段左端 菊地美沙さん
菊地管理者のコメント
SCWを活用する事で一緒に働く仲間が情報共有し、安心してご利用者さまへ支援を提供しています。
ルートの効率性、リアルタイムでの状態把握→居宅への提案、コミュニケーションツール、根拠のある勤怠管理などテクノロジーを活用する事でのメリットはたくさんあります。
できないことに目を向けるのではなく「できること」「できる工夫を考えること」に着目し、事業所一丸となって取り組んでいます。
働く人材が減っていくことが予想される今、しっかりした土台を構築していきたいと思っています。

下段中央が菊地管理者
社会的意義
柴田訪問介護事業所の事業運営の特徴は、訪問介護において基本を「精度」高く実行するためのツールとして、SCWを活用している点にあります。
介護において、収益と品質を同時に改善するためには、以下の訪問介護の基本の徹底が重要になります。
①地域連携
②多職種連携
③受入れ体制を整備し断らない
④適切な情報収集(アセスメント)
⑤自立支援・残存能力の活用に基づくケア時間・内容の提案
⑥ルート調整による稼働率管理
SCWの導入当初、紙からテクノロジーへの切替えにより、ヘルパーの直行直帰が大幅に増加しました。
柴田訪問介護事業所では、テクノロジーの導入効果を最大限に引き出すために、 「常勤職員・ヘルパーは、迅速・正確なデータを送信する」「サ責は、データを分析し指導・OJTや居宅への支援の提案を行う」を「精度」高く実践しています。
本実証事業は、単純にテクノロジーを導入するだけでは十分な効果を得ることはできず、オペレーション(テクノロジーを使う人の作業)とテクノロジー一体で事業モデルをデザインする重要性を示唆しています。
柴田訪問介護事業所の皆さま
実証事業と未来の介護(在宅)の成功をお祈りしています!







