Future Care Lab in Japan通信 Vol.18

この連載ではFuture Care Lab in Japan(以下FCL)という研究所について、何を目指し、どんなことをしているのかをご紹介していきます。
第18回目は『介護テクノロジーの精度』についてです。
介護テクノロジーの展示会に出向くと、排泄センサーや転倒検知センサーなど、さまざまなセンサーの展示があります。その中で目に付くのが「検知精度99%」といった非常に高い数値。これらは介護負担の軽減と利用者の安全確保に大きく貢献する可能性があり、導入担当者にとって大きな魅力となっています。私たちFCLでも、日々多くの製品に触れ、その可能性に期待を寄せています。
しかし、製造メーカーの販売担当者に検知精度について詳しく尋ねると、こうした数値が特定の条件下で限られた動作パターンのものであることや、小規模な検証で得られたものが少なくありません。また、「検知」の定義自体が曖昧で、中には根拠不明なケースもあります。高い数字に惹かれて導入を進めても、現場の実状と合わず期待外れになるリスクが潜んでいます。
― 精度の裏付けを確認すること ―
前提として、すべての製品にそのような問題があるわけではありません。多くの製造メーカーは信頼できる方法で検証し、データを開示してくださいます。大切なことは、開示された数値をそのまま鵜呑みにせず、取得方法や裏付けをきちんと確認することです。
具体的には、
- メーカーへ検証データの開示を依頼し、試験条件、サンプル数、評価基準を確認する
- 開示が難しい場合は、PoC(実証実験)を実施して自らの環境で性能を確かめる
など、確認の方法はいろいろあります。
実際にFCLで経験した事例の一部を紹介します。
数年前にとある海外メーカーの転倒検知テックについて、日本の商社経由でFCLへ持ち込みがあり、検証することになりました。その当時、転倒検知するテクノロジーが出始めのころで、製造メーカーからは高い検知率が謳われていました。
現物をラボの模擬環境に設置し、専門職(理学療法士)監修のもと、31の転倒ケースを複数の被験者(FCL研究員)で検証しました。その結果、当初謳われていた精度よりも低い検知結果となりました。その原因についてメーカーへ問い合わせをしたところ、センサーから転倒した地点の距離が、指定の範囲内であるものの、距離に応じて検知精度が低下するということが分かりました。また、転倒する際の高低差が少ない場合(例えばベッドからのずり落ち等)は検知しづらいことも分かりました。これらは当初製造メーカーから説明がなく、後から分かったものです。
このように、実際に使ってみると一口に「精度」といっても、さまざまな条件によって結果は異なることが分かります。
― 必要な精度とは何か? ―
人間の体格や行動はさまざまで、環境要因(照明、家具配置)も千差万別です。そのため、どんなに優れたテクノロジーであっても100%の精度を常に発揮することは現実的に極めて難しいと言えます。メーカー発表の高い検知精度は理想的な条件下の結果であることが多く、実際の現場ではある程度の誤検知や検知漏れが発生することは避けられないと考えます。
検知精度が高いに越したことはありませんが、では本当にどれほどの正確性が必要なのでしょうか?
何を確認できて、何を許容できるのかを丁寧に検討することも必要だと思います。例えば精度が80%に満たなかったとしても、それを事前に知った上で「知れないより知れることを優先し、誤検知は数回なら許容する」「検知漏れは別の対策を併用する」といった運用ルールを設けることができれば、十分に役立つ可能性はあります。また、経時的な変化を確認する目的であれば、多少精度が低くても、日常の変化は捉えることはできるでしょう。
完璧を追い求めるより、機械の限界を理解した上で現場の実情に合った「活用し続けられるテクノロジー」を選ぶ視点も必要だと考えます。
テクノロジーの高い精度表示は魅力的ですが、それを介護現場で本当に再現できるか、その根拠を確かめることが重要です。そもそもどの程度の正確性であれば許容できる範囲かを見極めることが大切なのだと思います。
もし現場で気になるテクノロジーがありましたら、FCLにお問い合わせください。
みなさんと一緒に検討していければと思います。







