ケアエール de 実践! 暮らしを支えるデジタル活用 ~川越霞ヶ関デイサービス~

本掲載ではケアエールを活用しながらご利用者さまの望む暮らしを実現できた事例についてご紹介しています。
第18回となる今回は、ケアエールを使うことでご利用者さまの生きる楽しみを共に育んできた事例を紹介します。
「SOMPOケア 川越霞ヶ関デイサービス(以下「川越霞ヶ関デイサービス)」の管理者、岩瀬さんにお話を伺いました。
川越霞ヶ関デイサービスって、どんな事業所?
川越霞ヶ関デイサービスは、定員18名の地域密着型通所介護事業所です。「過去にやっていたことが再びできるようになる、現在できていることを続けることができる、未来も元気に大好きな川越で過ごす」を合言葉に、ご利用者さま一人ひとりの「できること」に着目したきめ細やかなサポートを実践しています。
ご利用者さまの主体性を引き出すため、班長制度を導入し、ご利用者さま中心に朝の会やレクリエーションの準備などを行っています。これらの取組みは社内でも高く評価され、第8回グランプリファイナルでは見事グランプリを受賞されました。

ご利用者さま主体のデイサービス、川越霞ヶ関の挑戦
介護での人手不足が課題となる中、川越霞ヶ関デイサービスの管理者・岩瀬さんは、ご利用者さまの笑顔を守るため、事業所の役割を見つめ直し、担当部長との相談を経て大きな決断を下します。
それは、ご利用者さまが「できること」を自ら率先して行う、主体的な事業所作りでした。
ここから、川越霞ヶ関デイサービスの新たな挑戦が始まりました。
要介護5からの回復:Iさまが見つけた役割と生きがい
ご利用者さま主体の川越霞ヶ関デイサービスでは、介護度に関わらず、お一人おひとりの「やりたい」や「できること」を自ら行う気持ちを尊重しています。今回は、要介護5と認定されていたIさまの事例をご紹介します。
当時、Iさまは度重なる入院を経験され、体力や気力の低下、精神的に不安定な時期があり、多量の服薬をされていました。夜間は眠れず日中はぐったりと過ごされることが多く、ご家族も心配されていました。

川越霞ヶ関デイサービスを利用し始めた当初、Iさまは何もする気力が起きませんでした。来所されてもソファでいつも横になっており、「何もできないのにここに居て良いのだろうかと」と悩んでいらっしゃいました。周りの方からも、Iさま自身が居づらそうに見えていたそうです。そんなIさまに対して、あるご利用者さまが優しく声掛けました。
「辛いなら寝てていいよ。無理にしなくていいんだから」
その何気ない言葉でIさまは「ここに居ていいんだ」という安心感が得られたそうです。それから次第にIさまは「何か周りの役に立ちたい」と思うようになっていきました。そして医師とも相談し薬を減らす調整を行いました。徐々に起きている時間は長くなり、少しずつ座って過ごせるようになりました。


普通は職員が行うようなことも、ご利用者さま同士で協力し合って過ごす毎日は、Iさまにとって新鮮なものでした。川越霞ヶ関デイサービスの取り組みは、Iさまに「自分も周りの役に立ちたい」という意欲を湧きたてたのです。
小さなことから少しずつ、自分にできることを手伝っていく。そんな毎日はIさまに劇的な変化をもたらしました。なんと、1年も経たない内に身の回りのことはご自身で出来るようになり、介護度も要介護5から要介護2まで回復したのです。

以前から裁縫が得意だったIさまは、職員の洋服の裾上げや、プレゼント・玄関の飾り付けなどを考えて作ってくれるようになりました。
川越霞ヶ関デイサービスは、Iさまにとって「役割」と「生きがい」を見つける場所となったのです。

ケアエールを通じてIさまの生き生きとしたご様子が遠方に住む娘さまに伝わることで、娘さまは安心して過ごされています。
また、以前はケアマネジャーに頼りがちだったIさまも、今ではプライベートサービスなどを活用し、ご自身で主体的に生活を組み立てられるようになりました。

「視える」ことで深まる絆と高まるケアの質
こうした取組みの中で、多くのご利用者さまが生き生きと役割を担ったり、日々の活動に参加されるようになったといいます。例えば、Sさまは、班長を務めることで役割を得て、デイサービスに行くことが何よりの楽しみになりました。それはお休みの日でも朝早くから歩いて来所されてしまうほどで、今ではほぼ毎日利用されています。ご家族はSさまの認知症を案じ、見守りカメラでご不在の際に心配されていましたが、ケアエールによって川越霞ヶ関デイサービスへの通所が確認できるようになりました。これがご家族の安心につながり、Sさまの自立した生活をケアエールが支えています。

また、精神疾患を抱え、当初はデイサービスへの来所を嫌がり、「お腹が痛いから帰る」と訴えることもあったKさま。しかし、昔から絵を描くことが好きだったとわかり、職員が作品制作をお願いしました。すると、趣味の絵を通じて気持ちが落ち着き、デイサービスで過ごす時間が増えました。
今では、ちぎり絵や貼り絵といった季節感あふれる作品で自身の展示会を開くことが目標になっています。制作中のご様子はケアエールを通じて遠方の娘さまやケアマネジャーにも共有されており、Kさまの変化は多くの方に喜びをもたらしています。

岩瀬さんは、「ご利用者さまが役割ややりがいを持ち、前向きな姿をご家族に報告するツールとして、ケアエールPROが活躍しています」と語ります。
ご家族からは生き生きと活動する様子が「視える」ことで、「役に立っているんだな」「ありがとう」という感謝の気持ちに繋がっています。
導入後の主な変化
【スタッフの業務効率化とケアの質の向上】
・記録作成の負担軽減: 写真中心の情報共有で日々の記録作成負担を大幅軽減。
・ケアの質向上と記録の定着: 傷の経過記録を悪化から治癒まで一連のストーリーで残し、質の高いケア提供へ。
・モニタリング作成時間の短縮: 紙管理削減、モニタリング作成時間を大幅短縮。複数のiPadから写真探す手間がなくなり、PCが苦手なスタッフもスムーズに業務を行える。
【ご家族とのコミュニケーション強化】
・ご家族の理解と信頼獲得: 視力など言葉で伝えにくい状況も写真で具体的に共有。良い面も課題も率直に伝え、ご家族はケアへの理解を深め、厚い信頼へ。
・関わり方の変化: ケアエールを通じ、遠方のご家族もデイサービスでの様子や普段の生活状況を把握。介護への積極的な関わりを促進。
【他事業所との連携と新規紹介の増加】
・信頼からの紹介: 「〇〇さんが好きな歌手の映像を鑑賞されている」など、日々の写真による共有は、ご家族やケアマネジャーが伝えた情報がケアに活かされていると伝わります。ご家族の喜ばれる声を聞き、ケアマネジャーも「これだけしっかり見てくれるなら」という信頼から新規のご紹介も増加傾向。
「卒業」を目指し、地域資源となる未来へ
川越霞ヶ関デイサービスの目標は、ご利用者さまが心身の機能を回復され、デイサービスに通う必要がなくなる「卒業」を迎えていただくことです。
この「卒業」には、地域社会との連携強化が不可欠だと考える岩瀬さんは、川越市の活動団体マップなどを活用し、ご利用者さまと地域の社会資源を繋ぐ役割を担いたいと語ります。
要介護度が下がったIさまが『じゃあその一日はお手伝いで来ようかしら』と語ったように、将来的にはボランティアとして裁縫の先生になるなど、事業所自体が地域資源になる可能性も秘めています。ご利用者さまの「生きる楽しみ」を育む川越霞ヶ関デイサービス。
ケアエールPROは、閉鎖的になりがちな介護を、ご家族やケアマネジャーといった関係者にとって開かれたものとし、ご利用者さま一人ひとりが意欲と役割を持ち、自立した生活を送るための確かな地盤となっていました。

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